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「地域イノベーションパートナーシップ事業」とは

投稿日:2009年7月17日 金曜日

静岡情報産業協会は、設立から18年が経過した昨年10月に、特定非営利(NPO)法人として再出発いたしました。
協会設立以来、「産・官・学」からなる協会の特性を活かして地域の情報化に関わる活動を続けて参りました。しかし、世界の情報化の歩みは留まることなく急速に進んでおり、時代に即した更なる地域の情報化の推進に関連して、とりわけ地域の中小企業活性化、地域住民の情報リテラシーに対する啓蒙・啓発や地方大学等の教育機関との連携による地域の高度情報化人材の育成や研究・調査への取り組み、政令市静岡を中心とした自治体のIT化推進への協力体制の構築などに事業の焦点が移りつつあります。
 そこで、NPO法人として上記の課題に挑戦すべく事業計画を模索する中で、経済産業省から一通のメールが届きました。以下にその主旨を引用します。

経済産業省の問題意識

  • 現在の地域ベンダの売上は首都圏関連の仕事に依存しているが、首都圏大手ベンダからの下請仕事や派遣業務が今後減少した場合、地域ベンダの経営危機が深刻化し、地域の経済状況や雇用問題に影響を及ぼす可能性がある。
  • 中小企業の生産性向上のためにIT利活用は不可欠であり、地域中小企業へのサービス提供は地域ベンダが担う必要があるが、中小企業は地域ベンダによるITサービス提供に必ずしも満足していない。
  • こうした状況に対応すべく、地域IT化の自給自足体制について意識のある地域ベンダが、今後地域でITサービスを提供し続けることができるようにするため、自力では困難な技術力や営業力、また、地域ベンダ間の連携促進を支援するための施策を講ずる必要がある。
  • 地域経済ITパートナーシップとは

  • IT活用による地域産業の活性化を目的に、「IT利活用力強化」と「IT供給力強化」の両面から見た対策等について、地域の関係者(地域ベンダ、IT組合、中小ITユーザ、ITC、中小企業団体、情産協、金融機関、等)が参加・貢献できるような組織体。
  • 地域経済ITパートナーシップでは、地域における状況を踏まえ、関係者間での情報交換により地域へのIT供給力を高めていくための気運を高めることをイメージしており、具体的な事業は参加組織や企業が行うことを想定。
  • 国の支援のイメージ(平成21年度~)

  • 地域の自主的な活動を支援するため、地域の取組みの中身に応じて、技術向上支援(テスト環境の提供、開発モジュールの提供等)、人材育成支援(講師派遣)、営業強化等支援(製品、サービスの情報収集・普及、地域DB作成、表彰制度等)といったソフト支援を実施(予定)。
  • 支援手法は、国からの事業委託を想定。IT経営応援隊事業と同様、本省が行うものと地方経済産業局が行うものに分けて実施。
  • IT経営応援隊事業

    経済産業省が実施する中小企業IT利活用のための支援事業。セミナー、研修会等の超上流工程を支援。

    「地域イノベーションパートナーシップ事業」として実現

     この情報は、まさに当協会(SIIA)のために提案されたような事業案であり、この事業が後に「地域イノベーションパートナーシップ事業」として実現されたのでした。
     この情報を入手した直後から、SIIAとしては、この事業に高い関心を持ち、関東経済産業局の担当者とも直接面談し、事業への参画の意欲を示しました。
     また、この事業の主旨をSIIAの会員の皆さんにも広めるため、10月に開催されたSIIAのNPO法人化の総会時に、関東経済産業局の事業担当官の長野雅仁係長を講師に招き、「平成21年度経済産業省新施策と『地域イノベーションパートナーシップ』構想について ~地域内ITベンダとユーザーとの連携を通じた地域経済活性化を図る施策の解説~ 」といった演題で講演をいただきました。
     その後も、メールでの情報交換や面談、ヒアリングなどを積み重ね、年末には事業の概要も公開されました。
    SIIAとしても、着々と下準備を進め、3月の運営委員会で正式に「平成21年度中小企業経営革新基盤整備委託費(IT経営実践促進事業〔関東地域〕)」(通称:関東IT経営応援隊事業)に応募することの承認を得た後、会員企業から人材を出して頂き、8名体制でワーキング・グループ(WG)を結成し、具体的に事業応募に向けた準備を開始しました。
     本年度に入り、4月2日には事業の公募が発表され、早速応募資料の作成作業に入りましたが、4月28日の締め切りまでに与えられた時間は、実質は僅か3週間程度でしたが、WGのパワフルな作業により、期限一杯になりましたが無事応募資料を関東経済産業局に提出することができました。
     その後、5月11日に、関東経済産業局より、「本日(5/11)外部審査委員会にて審議したところ、貴殿を平成21年度関東応援隊事業の採択者として決定いたしました。」との通知を受け取ることができました。

    静岡地域イノベーションパートナーシップ事業概要

    1. 背景および事業目的(経済産業省による)

    人口減少社会というこれまでにない局面を迎える中、我が国が将来に亘って経済成長を持続するためには、企業が、ITを高度に利活用することによって経営戦略を遂行し、生産性を高めて競争力の強化を図ること(以下「IT経営」という。)が必要不可欠である。
    政府が策定したIT新改革戦略(平成18年1月19日IT戦略本部策定)では、企業のIT経営の推進が重要施策の1つとして位置付けられており、具体的には、2010年度までに世界トップクラスのIT経営の実現を目標としている。
    しかしながら、我が国の企業におけるIT利活用の状況は、企業内の一部門での活用にとどまっていることが多く、部門又は企業間を超えたITの利活用により、ITの可能性を充分に引き出している企業はごく僅かである。特に、中小企業においては、ITに関する知識、活用能力、取組意識などの様々な問題により、大企業に比べてITの利活用が不十分な状態にあり、その原因の1つとして、地域の中小企業ITユーザがIT経営の実践に必要な情報システムを導入しようとしても、それを提案する地域のITベンダが見つからないという問題も指摘されている。
    また、新経済成長戦略においては、広域経済圏ごとに、地域の中小企業ITユーザとITベンダの連携を図る「地域イノベーションパートナーシップ」(以下「パートナーシップ」という。)を推進し、中小企業のITの利活用によるイノベーションの創出を促すことによって地域活性化を図るための基盤整備の必要性が指摘されている。
    こうした現状を踏まえ、関東経済産業局管内の地域(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、山梨県及び静岡県)において、我が国経済の量的・技術的基盤を支える中小企業におけるIT経営の実践促進及びITベンダの競争力強化等を支援するとともに、パートナーシップを促進するための環境整備を目的として、各種団体(地方公共団体等の公的団体、中小企業支援機関、金融機関、ITコーディネータ等の専門家等)と連携を図りながら「関東IT経営応援隊事業」を実施する。_

    2. 静岡地域パートナーシップ事業の骨子

    静岡地域としての事業の骨子として、今後新たな時代に向け、我が国ひいては地域が将来に亘って経済成長を持続するために必要不可欠とされる「IT経営」の普及促進のために、地域経済を支える中小企業の経営者に向けて、「IT経営の重要性」に対する更なる啓蒙ならびに研修と、そのようなIT経営を推進するユーザー企業を支えるために不可欠な技術やサポートサービスなどを提供する地域のベンダーの強化・育成するとともに、従来疎遠な関係から、今後の地域発展の推進力を強化のため、両者の協力関係をより緊密する事業を実施する。

    3. 静岡地域中小企業経営革新基盤整備事業の目的

    事業の骨子を受け、当地域としては、将来に向けて継続的に、ユーザー企業ならびにITベンダー企業の双方に、IT経営の力量を向上させるための長期に亘る教育研修プランおよび独自の研修カリキュラムを策定するため、「静岡地域中小企業経営革新整備事業」を推進するものとし、その事業計画に沿って、地域パートナーシップ事業を本事業の「ブースター」的な役割として位置づけ、パートナーシップ事業終結後も、毎年研修プログラムのスパイラルアップを続けることにより、地域のIT経営に資する研修機関的な役割を担うことを究極の事業目的とする。

    4. 事業の狙い

    従来のユーザー企業とITベンダーの間には、諸問題が多く要望した人材とは違うなどの差異が発生し、人材のベストマッチングを行うことができなかった。
    また、ユーザー企業の「仕事を出す」側の要望も、スキル不足などによりベンダー側にうまく伝わらずにプロジェクトが難航するケースも多発している。
    同様に、「仕事を受ける」側のベンダー企業にも、受け手のスキルミスマッチなどが発生し、受け手としての問題も浮き彫りになっている。
    今回は、この双方が効率よくプロジェクトを運営しミスマッチを防ぐことを目的とし、ITユーザー、ITベンダー共に、「中小企業」にターゲットを絞り、以下の施策を永続的に実施し、安定化を図るものとする。

    5. 実施による将来的な目標

     ITユーザー向けおよびITベンダー向けを対象にマッチングを継続することにより、ユーザー企業の出す側の資質向上ならびに受け手側の質の向上が保たれ、ベストマッチングが図れること。
     また、共通の物差し(UISS、ITSS等)を使うことで、共通の認識が生まれ、物差しは時代とともに変更されるものの、今後も最新の物差しで継続して相互認識が可能となる。